美しき対談
Vol.5 中林 舞 Mai Nakabayashi
冨士山アネット/Manos.(マノス)初の単独本公演として行われる[醜い男]。
この傑作戯曲を上演する為に集まった方々と演出の長谷川寧が対談をしていくシリーズ[美しき対談]。
第5回目は快快のメンバーとして国内外で活動した後、現在はフリーで様々な団体に出演する傍ら、振付家としても活動する中林舞さん。
三次元でのイメージがすぐに追いついてくる面白さ
長谷川寧(以下、寧) DULL- COLORED POP『河童』お疲れ様でした。
中林舞(以下、中) お疲れ様でした。
寧 冨士山アネット/Manos.には今回初めて参加してもらいますが、知り合いになってもう長い事経ちますね。
中 長いね…(笑)
寧 僕は快快にいた頃から知ってるから、今回すごく新鮮で。しかもこんなストレートプレイの演劇公演に参加してもらうなんてね。
中 ね。
寧 最初、台本をお渡しした時に初めて読んでもらって、いかがでした?
中 第一印象はすごく面白い本だなって。台本にも色々種類があると思うんですけど、三次元に立ち上げるために「どういう風に立ち上げていくんだろう」という思考を結
構巡らせないとイメージがなかなか追いつかない台本もあって、それが良い悪いという意味ではなくて。
でも、『醜い男』は読んでいる内に、三次元でやっているイメージがすぐに追いついてくる面白さがあって、一気に読んじゃいました。
寧 読みやすいよね。
中 そうそう。
ミチコぐらいの感覚で
寧 海外戯曲ってやった事あります?
中 あるけど、シェイクスピアですね。
寧 いわゆる古典なんだ。
中 柿喰う客の『失禁リア王』とか、東京デスロックで『ROMEO&JULIET』を。
寧 東京デスロックは結構原作を解体してる感じですよね。
中 そうですね。柿喰う客は原作をギュッと凝縮してる感じで。
寧 海外戯曲を読む時に、日本の戯曲と違う感覚ってあります?
中 以前は結構違うと思って読んでたけど、最近はあまりなくて。自分に寄せて読んでいるからかもしれないけど。
寧 それは、自分の感覚に寄せてるってこと?
中 そう。昔は、外国人達がやる戯曲だという意識で読んでたけど、歳をとってきたら…
寧 そんなに歳じゃないでしょ(笑)
中 そうなんだけど(笑) まぁ自分の中で違ってきたというか。
寧 色々な経験とか感覚が増えて来て、腑に落ちる事は増えるよね。
中 うん。国内の戯曲とあまり違わないんじゃないかと思えてきました。名前は横文字ですけど。
寧 今回の役名、ファニーですからね。
中 それもミチコぐらいの感覚でやってます(笑)
寧 和風(笑)
ダンスと演劇
寧 まだ始まったばかりですけど、稽古の印象はどんな感じですか?
中 最初に寧くんからお話をもらった時に、まず「ダンス公演なんですか?」って聞いたんですけど。
寧 それね、各方面から聞かれました(笑)
中 私は、芝居をする時は芝居の演出家と一緒にやってきているんですけど、寧くんは芝居の演出家とはちょっと感覚が違うと思うんです。
ダンスや振付を長くやってきた感覚が、そのまま芝居に移行しているんだろうなと思って。その演出が、私にとっては結構未知だな、と。
それがどんな風に芝居の作品にまとまっていくのか、まだ想像がつかない。
寧 まだね、稽古に参加して数日だからね。ダンスの振付をする現場と、演劇の現場があるけど、どうやってモードを切り替えてます?
例えば振付は演劇的な思考で考えるのかな。僕は、すごく演劇的な思考で振付をしているところがあって。
中 ダンスは、バックに音楽が流れていて、やりとりをリズムに乗せる事が多いから、その辺はもしかすると演劇と思考が違うかもしれない。アイドルの振付とかね。
寧 振付は、歌詞から起こすの?それとも音から?
中 音も、歌詞も、両方ですね。
寧 この間 お互い振付家として現場をご一緒したDULL- COLORED POPの『河童』でもそうだったけど、
演劇と振付の両方をアクティヴにやっている人って実は少ないので、そういう人って希少価値が高いなと思っていて。
今回は一緒に稽古をしていて、意外と演劇的につくってくるんだなと。
中 演劇が大好きですからね(笑)
寧 まぁね(笑)
台本の面白さを超える
寧 今回の現場では、何か目標はありますか?役柄でも、作品的にも。
中 先に台本でガツンと良いものを出されちゃってるから、自分が良いなと思ったものを、自分が演じる上で超えていく事を頑張りたいな、と。
寧 普通にリーディングで読んでも面白い戯曲ですからね。
中 私がやるならリーディングでも、台本の面白さを超えられる、ぐらいの勢いでいきたいなと(笑)
寧 そうね。演劇的にもすごくチャレンジしてる戯曲だよね。ト書が全くなかったり、気付いたら次のシーン、という展開も演出家としてはどんな風にするか考えると楽しいし。俳優としては大変ですよね。
中 でも、台本がしっかりしているので、忠実にやりたいですね。
寧 今回の出演者は、俳優の中でも身体に意識のある人達で、その四人でこんなにがっつりと会話劇をやるのって面白いなぁと。共演者についてはいかがですか。
中 みんな大好きですよ(笑)
寧 まだあと稽古期間は一か月くらいあるけど、いま範宙遊泳の稽古も行ってるんですよね?
中 範宙遊泳も面白いですよ。観に来てください!先に本番がありますから!
寧 そうだね、ウチも面白く立ち上げていくよ。今回、紅一点なので頑張ってね。よろしくお願いします。
中 こちらこそ、よろしくお願いします。
中林 舞 Mai Nakabayashi
俳優/振付師
2004年の旗揚げから2012年迄、快快[FAIFAI]の主要メンバーとして活動。海外公演含むほぼ全ての作品に出演。
近年の主な出演作に
LAUSU「青年Kの矜持」(演出:千葉雅子)、ニッポンの河川「大きなものを破壊命令」(演出:福原充則)
DULL-COLORED POP vol.13「アクアリウム」(演出:谷賢一)、柿喰う客 女体シェークスピア#004「失禁リア王」(演出:中屋敷法仁)
範宙遊泳「さよなら日本-瞑想のまま眠りたい」(演出:山本卓卓)、FUKAIPRODUCE 羽衣「サロメ vs ヨカナーン」(演出:糸井幸之介)
「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~KERAversion」(演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ )、「時計じかけのオレンジ」(演出:河原雅彦)
等
振付師としては、
でんぱ組.inc/BiS/Ray/むせいらん などのアーティストや、
DULL-COLORED POP「河童」、官能小説 糸井幸之介×「安寿と厨子王」などの演劇作品にも振付を提供。
現在はアイドルグループ、"バンドじゃないもん!"の振付を担当している。
クラシックバレエが源流のアクティブな振付に定評がある。