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美しき対談

Vol.4 大原研二 Kenji Ohara

冨士山アネット/Manos.(マノス)初の単独本公演として行われる[醜い男]。

この傑作戯曲を上演する為に集まった方々と演出の長谷川寧が対談をしていくシリーズ[美しき対談]。

第4回目は長谷川寧が振付した[河童]に出演、その存在感で舞台の屋台骨を支えるDULL-COLORED POPの大原研二さん。

主人公レッテの上司、そしてレッテを整形する医師、シェフラーを演じます。

理解出来る領域に於ける不条理

 

長谷川 寧(以下、寧)  DULL-COLORED POP『河童』お疲れ様でした。

大原 研二(以下、大) お疲れ様でした。

寧 冨士山アネット/Manos.に今回初参加ですが、まずは[醜い男]の台本を読んで如何でした?

大 海外の台本だなという印象がありました。日本人でこの様な戯曲を書く人って思い浮ばないなと。

  あと、ありがちな言葉で言うと不条理な台本なんですけど、でもすごく身近にある問題を扱っていて。

寧 台本が、ひとえに不条理と括ってしまうほど不条理な訳でもないんですよね。

大 そうなんですよ。絶妙な按配で。理解できなくなる領域にはいかずに、その少し手前の所で時間が流れていて、それがとても面白くて。

 

四人芝居最強説

 

寧 海外戯曲はやった事あります?DULL-COLORED POPでは『プルーフ/証明』を扱っていましたよね。

大 『プルーフ/証明』は僕はやっていなくて、稽古や本番はずっと見ていました。

  『プルーフ/証明』は正当な意味で会話劇な感じですが、[醜い男]はそれとは全く違った面白さですね。

寧 会話劇だけど、会話だけで構築する戯曲ではないですよね。

大 そうですね。会話から得られるリアクションだけでは単純に紡いでいけない感じはします。

  会話の妙や展開のスピード感に惹かれて、今までに読んだ事のない戯曲だなと感じました。僕の中には無い様な世界観で、だからこそ挑戦してみたいなと思いました。

寧 そういえば以前に、四人芝居最強説を唱えてましたよね(笑)

大 はい、それは『プルーフ/証明』の影響が強いと思いますけど(笑)。[醜い男]も四人芝居ですしね。

寧 四人芝居の好きな処って何ですか?

大 元々少人数の芝居が好き、というのはあって。その中でも、例えば二人芝居だと、観る側にも逃げ場が無いというか、

  観客に刃を突きつける様な空気になりがちな所がありますが、四人だと観客も少しリラックスできて、役者も良い意味で息を抜ける瞬間がある気がして、

  良い状態の空気感をキープできる人数かなと思ってます。

寧 ダンス作品とかでも観ている時、ソロやデュオってコミュニケーションの方向性がある程度決まって来てしまったりするのですけど、

  三人以上になるとやはり駆け引きが存在するから、そこが面白くて好きですね。

大 駆け引きで影響を受ける材料としても、四人という人数が丁度良いなと思っていて。あまり多くても消化しきれなかったりするので。

  この台本は、一人二役で展開も早い割に急ぎすぎた感もなくて、演劇の面白い要素が入っている台本だなと思います。

 

自分の想像を超える領域へ

 

寧 今回『河童』の振付現場ではお会いしていましたけど、改めて現場をがっつりご一緒する事になりまして、稽古場の様子などいかがですか?

大 (中林)舞ちゃんとはDULL-COLORED POP『アクアリウム』でも共演はしているんですけど、

  お互いほぼ絡みの無いポジションだったから創作過程の共有は今回が初めてで、そう考えると僕にとっては全員ハジメマシテな座組ですね。

  とっても楽しみにしていた現場で、その予感があたっているなと思い始めてます。

  出演者は全員面白いですし、寧さんも僕が今まで一緒にやってきた人とは全然違うタイプの演出家で、

  最終的にどんな風に交じり合っていくか今からすごく楽しみですね。

寧 今回、目標はありますか?

大 初見で台本を読んだ時に面白いと思った事を、実際に人が動いて立ち上げた時に失いたくないなと。

  稽古場でやりながら「こういう見方もできるな」と右往左往したりするんですけど、

  結局初見で感じた面白さが一番信じられる処だったり、観客には一番しっかり伝わったりする処なので、そこを失いたくないと思っています。

  あと、せっかくハジメマシテな方々とご一緒するので、自分の想像を超える領域にいきたいなと思っております。

寧 御自分の所属劇団ではどんな風に作品を組み立てていかれるのですか?

大 劇団員も個々でタイプが違っていて、座付き演出家もそれを分っているから指示の出し方もそれぞれ変えていたりしますね。

  最近は驚く様な出来事はあまり無いですけど、その分精度を高めていける現場になっていると思います。

寧 演出家からの指示としては、どのくらい演者と演出家の間で決まり事を作っていかれるんですか?

大 あまりないですね。指示があっても無くても、回数を重ねている内に役者間で段々と収束はしていきます。あと、敢えて決めていない部分もあると思います。

  なので、僕は演出の指示や意向はあまり気にしすぎず、自分で考えてやっている部分が大きいですね。

寧 どこまで決め打ちにするかっていうのは難しいですね。

大 そうですね。[醜い男]については遊べる部分もあると思うし、やんちゃし過ぎると恐い部分もあると思います。

 

え、その角度から

 

寧 今回のご自分の役どころについては如何ですか?

大 面白いですね。解釈によって如何様にも変えられますし。

  相手の人物の事をどう捉えているかシーン毎にきちんとイメージしてやれると、細かい処まで詰めていけるんじゃないかなと思ってます。

寧 まだ稽古期間も一ヶ月ありますし、今は試して遊んでもらえたら。

大 寧さんの演出的な要求が、僕にとって初めてな要素がありそうだなと感じています。

寧 初めてというと?

大 いわゆる戯曲メインでやってきているタイプの演出家の要求は何となく予想できるんですけど、寧さんは予想とは違うところから要求が出てきそうだな、と。

寧 伏兵ですね。竹槍をもって凄い角度で襲いかかっていこうと思います(笑)

大 え、その角度から?!みたいな事がありそうですよね(笑)

寧 今後の稽古でも、引き続きよろしくお願いします。

大 はい。お願いします。

大原 研二 Kenji Ohara

DULL-COLORED POP所属。

映像・大衆演劇・Theatre劇団子などを経て2011年よりDULL-COLORED POP劇団員になる。以降全ての劇団本公演に出演。

「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」では、母・よし子役、

「アクアリウム」では、80年代を彷彿とさせる部長刑事役などインパクトのある役柄を演じる。

近年は劇団以外でも、ミナモザ「彼等の敵」(演出:瀬戸山美咲) 、アマヤドリ「うれしい悲鳴」(演出:広田淳一) 、

スカイロケット「旅猫リポート」(演出:白坂恵都子) など幅広く出演。

映像では、「アウトレイジ」(監督:北野武)に出演。

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