美しき対談
Vol.3 福原冠 Kan Fukuhara
冨士山アネット/Manos.(マノス)初の単独本公演として行われる[醜い男]。
この傑作戯曲を上演する為に集まった方々と演出の長谷川寧が対談をしていくシリーズ[美しき対談]。
第3回目は範宙遊泳のメンバーで、その飄々とした空気感で様々な舞台で活躍する福原冠さん。
主人公レッテの部下でもある本作品のキーパーソン、カールマンを演じます。
海外の現代戯曲を扱う事
長谷川 寧(以下、寧) お疲れ様です。宜しくお願いします。
福原 冠(以下、福) お願いします。
寧 今回、冨士山アネット/Manos.には初参加ですが、まず台本を読まれた感想は如何ですか。
福 今までにあまり経験した事のない戯曲だと思いました。単純に、大人っぽいやりとりだなと思った事と、四人芝居をやった事がなくてシーンの展開も早いので、
読んでいると面白いですが、演じるとなるとハードルを感じて、自分は大丈夫かな?と思いました(笑)
寧 ドイツで言われる読み物としての戯曲ではなく、上演用に書かれた戯曲と言われてますが、シーンがどんどんと展開していくにも関わらず、
詰め込み過ぎてもいない素敵な戯曲ですよね。海外戯曲は今までにやった事あります?
福 大学生の時に、エドワード・オールビーの『動物園物語』をやった事があります、それは二人芝居でした。
あとは、今KUNIOでやっている『ハムレット』(演出:杉原邦生)ですね。
自分と同世代の作家が書いた戯曲をやる機会が多いので、[醜い男]はやはり少し感覚が違うなと思いました。
寧 海外作品で現代戯曲を扱う機会は、少ないかもしれないよね。
福 そうですね。やってみたいと思っていました。
発想を出すベクトル
寧 まだ始まったばかりですが、稽古はいかがですか。
福 今までに経験した事のない稽古をしている感覚があります。何となくですが、役者が持っているセンスが問われる気がしています。
現場で如何にセンス良く発想できるか、ということが今回は大事な気がします。
寧 そういった事について、皆瞬発力のある俳優さん達ですよね。そんな四人と一緒に出来るのはこちらも面白い。
福 今はまだその発想を出すベクトルを探っている状態ですね。
一歩間違えると只のフザケになってしまうので、そのラインを稽古場でプランを試しながら探っている感じです。
寧 ダメなプランももっと見てみたい(笑) 皆でそのラインを確認していければ。
そういえば、今は割と日本でも多くはなって来ているけれど、ドラマトゥルクが居る現場って、いかがですか?
福 ドラマトゥルクが居ると、作品がつくりやすいですね。思いっきり失敗できるというか。稽古場で、安心して色々試せます。
寧 ドイツの現代戯曲だから、その文化に基づいて書かれている部分は絶対ありますものね。
ドイツでの格差の話とか、日本の感覚で演じていると気付けない事とか、やっぱり発見がありますよね。
福 芝居とは違う目線から、作品の文化や世界観に浸れますよね。
提案が多い稽古場
寧 共演者の方々は如何ですか。
福 みなさん舞台上で拝見していた方々で…
寧 共演された事はないんだよね。
福 そうなんです。みなさん拝見していた方々なので、最初寧さんからお話を頂いた時、驚いたし、嬉しかったですね。実際、(板倉)チヒロさんとお会いした時なんて、
その熱量は想像を超えてましたね。初めて読み合わせをした日の帰り道に、「この戯曲って演出次第でどんな風にも出来そうですね」という話をしたら、
チヒロさんが「そうだね。君ならどう演出する?」と(笑)
寧 格好良い(笑)
福 その時に、ドキッとして。
寧 彼は冨士山アネット/Manos.のリーディング公演[HIKIKOMORI]でも一緒で、演出家目線というか、舞台を客観視する能力がより必要な現場だと分っているから、
そう言ったのかもしれない。
福 それから、どういう稽古になるのかな、と想像しました。もしかしたら、他の稽古場に比べたら、お互いの提案が多い稽古場になるのかな、と思いました。
寧 実際の稽古ではいかがですか?
福 稽古場での寧さんが、イメージと違っていました。振付の様な感じで決め打ちが多い現場になるのかな、と思っていたのですが、見守ってくれているというか、
許容範囲が広いなと感じました。俳優からの提案を大事にしてくれる人だなと。
寧 それは、勿論稽古序盤という所も有るけれど、そもそも出演者の方々が提案出来る人だと信頼しているから、という部分が大いにありますね。
それに、四人という人数もあるかもしれないです。大人数の作品の時は、決め打ちでいかないといけない部分も多くはなると思うんですけど。
今回は、最初からあまりガチガチに決めてしまって俳優のやりたい事が出来なくなるのは嫌だなと思っています。
只、作品は俳優が気持ちよくやれば良い、というものでもないので、その辺は稽古をしながら見極めて行きたいな、とは思っています。
舞台上にいる、「そういう人」に
寧 今回、目標はありますか?
福 自分が居る事で、作品の幅を広げたいですね。自分はそういう役どころな気がするし、
戯曲が扱うテーマはシンプルだけど、それだけではない事も沢山盛り込まれていると思うので、作品に幅をもたせられたら良いなと思います。
寧 今回、ある種の余裕を持って浸れるようになる事が目標の一つかなと思っていて。
福 そうですね。日本人とか外国人とか関係なく、舞台上で、そういう人、と見てもらえる様に居れたらと思います。
寧 本番まで、よろしくお願いします。
福 こちらこそ、よろしくお願いします!
福原 冠 Kan Fukuhara
1985年生まれ。神奈川県出身。プリッシマ所属。
明治大学文学部演劇学専攻卒業後、次世代の演劇を担う若きカンパニーにいずれも主要な役どころで立て続けに出演し、
その様々な世界観から同様に信頼を得た実力派として新境地を開拓し続けている。
さらに、ダンスカンパニーの公演にダンサーとしても参加。また、DJとして都内のクラブやバーで活動する一面を併せ持つ。
主な出演作に
KUNIO「ハムレット」(作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:杉原邦生)、
範宙遊泳「うまれてないからまだしねない」(作・演出:山本卓卓)、オールスタッフ「猿後家」(作:三浦直之 演出・振付:北尾亘)、ナイロン100℃「SEX,LOVE&DEATH」(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)、
FUKAIPRODUCE羽衣「Still on a roll」(作・演出・音楽:糸井幸之介)、木ノ下歌舞伎「黒塚」(監修:木ノ下裕一 演出:杉原邦生)、悪い芝居「キャッチャーインザ闇」(作・演出:山崎彬)がある。