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美しき対談

Vol.2 板倉チヒロ Chihiro Itakura

冨士山アネット/Manos.(マノス)初の単独本公演として行われる[醜い男]。

この傑作戯曲を上演する為に集まった方々と演出の長谷川寧が対談をしていくシリーズ[美しき対談]。

第2回目は2012年に冨士山アネット/Manos.のとして初の公演となったリーディング[HIKIKOMORI]に出演していたクロムモリブデンの板倉チヒロさん。

本作の主演、タイトルロールである「醜い男」レッテを演じます。

良い意味の既視感の中での笑い

 

長谷川 寧(以下、寧)  板倉さんは冨士山アネット/Manos.というクレジットでの初めてのリーディング公演[HIKIKOMORI](作 ホルガー・ショーバー)に続いて、

           二作目の参加ですが、[醜い男]の台本については如何ですか?

板倉 チヒロ(以下、板) 読んでみて、[HIKIKOMORI]みたいにJ-POPは流さないんだろうなと思いました(笑)

寧 分からないですよ、どこかで流れるかもしれませんよ。

板 そうなんだ(笑) 台本の印象は、初めて読んだ時サッと読めて、めっちゃ笑いました。その時一人だったので、笑い切った後 すごく寂しくなったのを覚えてます(笑)

  翻訳劇って、どうしても外国の文化の違いとか何らかのフィルターがかかってしまって、自分が客席で観る時もスッと笑えない時があるのですが

  [醜い男]はスッと笑える台本でした。

寧 笑いって、弛緩が必要だから 匙加減が難しいですよね。

板 緊張と緩和って、よく聞きますよね。個人的には、台詞がスパスパッと鮮やかに重なっていったら面白いかなと思ってます。

  題材や設定は他のメディアでも扱っていたりするものだから、観る人は良い意味で既視感があると思います。

  物語に登場する人たちのリアクションは楽しめる処だと思うので、そこは頑張りたいと思ってます。

 

洒脱さを、どう壊すか

 

寧 台本上の台詞の返しがすごく洒脱ですよね。

板 そうそう。

寧 お洒落な笑いに向き合うのは、今回板倉さんにとっては挑戦じゃない?

板 僕はManos.に呼んでいただく時は、ダサさを期待されていると思っていて、今回もお洒落をダサくする要員だと自負していたのですが…アレ?…違うのですか(笑)

寧 板倉さんには、作品の根底に流れる高級感も大事にする為に、スマートにしつつ壊してもらえたらと思います。

板 スマートにしつつ壊す…まだよく分っていないので、家に帰ってからよく考えてみます(笑)

 

ルールを掴んで行きたい

 

寧 まだ始まったばかりですが、稽古はいかがですか?

板 今は全員で、今回のルールを作っている段階だと思ってます。その段階を抜けるとこれからどんどん楽しくなっていくんだろうな、と。

  テキストを頼りにやってきた役者が、冨士山アネットという言葉に頼らない、身体を使って表現している演出家とやる時に、齟齬はあると感じていて。

  でも、そこを面白く感じられる様になれば、もう確変ですよね(笑)

  今は生みの苦しみの段階ですが、踏ん張って、出演者四人でルールを掴んで行きたいです、これから見つけていきます。

寧 共演者の方々はいかがですか?

板 皆様、まだ様子を伺ってるんじゃないかと(笑)

  今まで出演されていた舞台を観て、それぞれ素敵だと思っていた役者さん達だから、稽古場で全く油断はできなくて、油断していると自分が喰われそうで。

  その恐ろしさがあるという意味で目茶苦茶信頼しています。全員が気持ちの良い落とし処を見つけようとしている最中だから、様子を伺ってはいるけど不安じゃない、

  という感じです。

寧 落とし処を見つけられる方々ですからね。

板 本当にみなさん、素敵ですよね。逆に演出家から見て、いかがですか?

寧 引き出しを持っている方々だという事は分っていて信頼しているので、今はまだこちらも様子を見ています。手紙を書いてお返事を待っている状態です(笑)

  良い化学変化を起せるようにしたいので、最初からあまり決め込まずに、皆が遊びを入れている状態から良いものがつくれたらと思っています。

  出演者の方々を見て、そんな事が出来る現場になりそうな予感があります。期待してますよ、座長(笑)

板 善処します(笑)

 

鮮やかな切り口を持っている戯曲

 

寧 今回、目標はありますか?

板 過去に日本で[醜い男]のリーディングや芝居が上演されていたとは聞いていて、その公演を観た人が今回観に来られるのではないかと思っているのですが…

寧 俳優の方々も、この戯曲を知っている人は皆さん好きな戯曲だと仰っていますね。

板 ね。今迄になくハードルが上がっている感じがしますが、そこに負けたくないなと思ってます。

  作品として比べられる運命にあるんだから、比べられても負けない強度にしたいです。

  それと。作品の持つテーマが、顔が綺麗・醜いという様な、普段演劇を観ていない人にもすごく届きやすいテーマだと僕は思っていて。

  多くの方が普段気にしている事に対して、とても鮮やかな切り口を持っている戯曲だから、普段演劇を観ていない人にも観てほしいし、

  観てもらった時に「演劇って、面白い!」と思ってもらえる作品にしたいと思ってます。

  個人的には、そろそろ良い歳になったので、抑制する事も覚えたいと思っています(笑)

寧 抑制する、というのは詳しく言うとどんな風に?

板 それは、作品としてではなく役者としての挑戦でして、牙を持ちつつ抑えが効いている、舞台上にただ立っているだけで凄い、

  そんな役者さんが大好きでとても素敵だなと思うので、今回は其処に少しでも近付ける芝居をしたいと思います。

寧 板倉さんの役どころは、整形をするという役柄ですが、その前後の違いというのが見所のひとつだと思いますが。

板 今回稽古場で、(整形前後の芝居の質の違いが)共演者から気持ち悪いって言われていて(笑)

寧 あれは、良い反応ですよね(笑)

板 良い事だと思って、自信を持ってやりたいと思ってます(笑)

  台本は面白いし、演出家も好きだし、共演者も凄い人達ばかりだし、お膳立ては整っていて、後は自分が頑張らないと。

寧 引き続き、よろしくお願いします。ありがとうございました。

板 ありがとうございました!

板倉チヒロ Chihiro Itakura

1980年12月4日生 兵庫県出身

2001年、クロムモリブデンに入団し、『去勢クラブ』以降、ほぼすべての劇団作品に参加。

その個性は舞台にとどまらず、「ラスト・シンデレラ」「カエルの王女さま」(CX)等のテレビドラマ、

映画「愛と誠」(三池崇史監督)「僕たちは世界を変えることができない」(深作健太監督) 等でも発揮されている。

他の出演舞台:「宝塚BOYS」(演出:鈴木裕美)、「ウサニ」(演出:永山耕三)、

東京パフォーマンスドール「PLAY×LIVE『1×0』(ワンバイゼロ)」(演出:ウォーリー木下)、

シーラカンスプロデュース「戯伝写楽-その男、十郎兵衛-」(演出:中屋敷法仁)、

タカハ劇団「世界を終えるための、アイ」「ネジ工場」(演出:高羽彩)、ままごと「スイングバイ」(演出:柴幸男)、

カムヰヤッセン「やわらかいヒビ」(演出:北川大輔)他多数。

冨士山アネット/Manos.には、VISIONEN ドイツ同時代演劇リーディング・シリーズ第5回「HIKIKOMORI」に続き、

2度目の出演となる。

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